村野友幸 Tomoyuki Murano

研究紹介

1. 神経過活動の生理的・病理的作用

神経過活動を、生理的な作用と病理的な作用の両面から調べています。電気けいれん療法を模した反復光遺伝学刺激(REPOPS)を用いて、繰り返される神経活動が核リプログラミングを介して神経細胞の状態を長期的に書き換え、抗うつ様の行動変化を伴うことを明らかにしました(Nat Commun 2026)。現在は、繰り返される神経過活動がなぜ抗うつ効果をもたらすのか、また神経過活動が精神疾患の病態にどう関わるのかを、トランスクリプトーム・エピゲノム解析などを用いて調べています(JST 創発的研究支援事業、科研費)。

2. ヒト疾患のトランスクリプトーム解析・メタ解析

ヒト死後脳や疾患モデルの公開遺伝子発現データを研究横断的に解析し、精神・神経疾患に共通する分子病態を一貫して探ってきました。アルコール依存症患者の海馬と前頭前皮質にみられる遺伝子発現上の「未成熟化」(Sci Rep 2017)、神経過活動による遺伝子発現変化が複数の精神疾患に共通してみられること(Commun Biol 2019)、脳の pH に関連する遺伝子発現が複数の疾患で変化していること(Front Psychiatry 2023)などを報告しています。こうした解析の流れの中で、外部の参照シグネチャに対して遺伝子発現をスコア化する手法を開発し、その考え方を単一細胞データに広げたのが RFind-sc です(bioRxiv 2026、ソフトウェア・データ)。

3. 脳における情報の符号化:カルシウムイメージング

神経細胞の集団が情報をどのように符号化しているのかに関心があり、特に海馬歯状回に注目し、正常マウスと疾患モデルマウスの両方で調べています。自由行動中のマウスのカルシウムイメージングと機械学習により、位置・速度・移動方向といった複数のナビゲーション情報が歯状回ニューロン集団の活動に互いに独立に符号化されていること、空間記憶に障害を示す αCaMKII ヘテロ欠損マウスでは一部の情報の解読精度が選択的に低下していることを示しました(PNAS 2022)。